多くの人に知ってほしい!ALSを題材にした5つのストーリー

今年の夏、ALSを宣告されたアメリカンフットボール選手に迫ったドキュメンタリー映画『ギフト 僕がきみに残せるもの』が公開されます。これまでもALS、それと闘う患者さん、ご家族の姿を描いた作品・ドラマはたくさん生まれてきました。今回は、そんなALSを題材に扱った映画・ドラマを5つ紹介します。多くの人に知ってほしい素敵なドラマばかりですので、機会を見つけてぜひご鑑賞ください。


博士と彼女のセオリーのセオリー

スティーヴン・ホーキング博士(Wikipediaより)

映画『博士と彼女のセオリー』は、2014年にイギリスで製作・公開されたドキュメンタリー映画です。ALS患者で、世界的にも有名な理論物理学者・スティーヴン・ホーキング博士と彼の元妻・ジェーン・ホーキングの関係を描いた物語です。

あらすじ

ケンブリッジ大学で物理学を専攻していたスティーヴン・ホーキングは、同じ大学で文学を学ぶジェーンと出会い、恋に落ちます。ところが、スティーヴンはその直後に手足の筋肉が自由に動かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、「余命2年」を宣告されてしまいます。ジェーンはそれを聞いてショックを受けますが、スティーヴンとともに生きることを誓い、結婚する道を選びます。

ふたりの間に子どもも生まれ、ごく普通の家庭生活を送りながらも、スティーヴンは論文の執筆・新説の発表など、精力的に研究活動を続けていきます。やがて症状が進行し、気管切開手術を受けて発音による会話ができなくなったスティーヴンでしたが、スペリングボードを使って何とか周囲とコミュニケーションを取る努力を続けます。そんな中でスペリングボードの使い方を教えてくれる看護師エイレンと出会います。有名なベストセラー『ホーキング、宇宙を語る:ビッグバンからブラックオール』は活発な研究活動とひたむきな闘病生活の中で生まれました。

富と名声を得たスティーヴンでしたが、一方でジェーンとの夫婦生活が微妙なものへと変化していきます。やがてふたりは離婚。それぞれ別の人生を歩むことを決断したのでした。


スティーヴン・ホーキング博士とALS

ご存じの通り、スティーヴン・ホーキング博士は世界的にも有名な物理学者で、ALSの発症後も精力的に研究活動を行い、宇宙論の最先端を切り開く新説を次々に発表、アインシュタイン後の宇宙論に大きな影響を与えた天才学者として知られます。

この映画は元妻のジェーンが書いた自伝がもとになっており、ストーリーもジェーン目線で展開します。ジェーンの自伝映画の色彩が濃いですが、物語中にスペリングボードを使ってリハビリを行うシーンもあり、ALS患者さんの実状の一端に迫った作品でもあります。




サヨナラの代わりに

(『サヨナラの代わりに』公式サイトより)

『サヨナラの代わりに』は、2014年公開のアメリカ映画です。ALSを発症した女性と、彼女の介護人を勤める女子大生との温かい交流を描いたドラマ。ブロードウェイの名演出家として知られるジョージ・C・ウルフが監督を務めています。

あらすじ

弁護士の夫を持つケイトは、35歳の誕生日パーティーでピアノを演奏中、これまでに経験したことのないような身体の異変を覚えます。病院で検査した結果、ALSであることが判明。それまで幸せだった生活が一転し、悲しみに暮れるケイトでしたが、友人たちの前ではなるべく笑顔を振りまいて心配させまいと気を使います。しかしそんな生活にも疲れ、心通わせる友人を求めて女子大生のベックを介護人として雇います。完璧主義のケイトはベックの仕事ぶりに口をはさみ、ベックもそんなケイトに反発、ふたりはことあるごとに衝突を繰り返します。

そんなふたりでしたが、あることをきっかけに友情が芽生え、互いに本音で語り合える関係へと発展。しかしその時、すでにケイトの症状は深刻なまでに悪化していて、いよいよ最後のときを迎える…と言うストーリーです。


アカデミー賞女優が熱演

主人公のケイトを、『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー主演女優賞を獲ったヒラリー・スワンクが見事に演じきっています。ALSを患い、症状が進化するに従って苦しくなる生活もリアルに描かれていますが、そんな中でも心の友を得て力強く生きる主人公と、彼女に影響を受けて自らの人生を前向きに捉えようとするベックの心情変化も丁寧に描かれた、見応えのあるヒューマンドラマです。




宇宙兄弟

(『宇宙兄弟』公式サイトより)

あらすじ(映画)

学校の成績は優秀、しかし自分の能力を信じられないムッタは、失業などの挫折を繰り返しつつ、幼い頃、弟と誓い合った「宇宙飛行士になる」と言う夢を片時も忘れずにいました。彼の弟・ヒビトは、一足先に宇宙飛行士となり、日本人初の月面着陸成功を果たしますが、それまで多くの挫折を味わうなど、彼の人生も決して平坦なものではありませんでした。

弟の背中を追いかけながら、数々の困難を突破し、見事宇宙飛行士となったムッタは、ふたたび弟と約束を交わします。「ふたりで月面に立とうぜ」そう誓い合った兄弟は夢の続きを目指して走り始める、と言うストーリーです。


父をALSで亡くしたヒロイン・せりか

主人公のムッタ・ヒビト兄弟とともにJAXA宇宙飛行士として活躍する、伊東せりかと言うヒロインが登場します。彼女には、14歳のときに父親をALSで亡くすと言う悲しい過去がありました。ALSは科学の進歩が進んだ現代においてもいまだ有効な治療薬が開発されていない、不治の難病。同じく解明されていない宇宙にこそ、ALSの原因を特定する謎が隠されているのではないか――そんな思いから宇宙飛行士を目指し、超難関の宇宙飛行士選抜試験を見事突破し、宇宙飛行士としての人生を歩み出すのです。

ISS(国際宇宙ステーション)搭乗でさまざまなミッションをこなしつつ、ALS実験にチャレンジするセリカでしたが、なかなか成功までたどり着けません。折り悪く、セリカを巡る悪評がネットで出回り、精神的にも孤立。上層部からも実験を中止するよう命じられますが、「ALSという病気をこの世からなくしたい」と強く願う彼女はあきらめようとしません。そして、とうとうALS治療薬の開発実験に成功。ALSの根絶に大きな一歩を踏み出したのです。

現実の世界でも、セリカの起こした奇跡に続こう――そんな思いで立ち上がったのが、宇宙兄弟『せりか基金』です。厳しい闘病生活を送るALS患者さんの希望を叶えるためには、1日も早い特効薬の開発が望まれます。せりか基金で集まった資金はALS基金に寄付され、治療研究費として使われます。




僕のいた時間

(『僕のいた時間』フジテレビ公式サイトより)

『僕のいた時間』は、2014年フジテレビで制作・放送されたドラマです。ALSを発症した大学生を巡る人間模様が丁寧に描かれています。

あらすじ

澤田拓人は、どこにでもいるごく普通の大学生。そんな彼を突然襲った難病が、ALSでした。やがて症状が進行し、電動式車いすでの生活を余儀なくされますが、恋人や友人など周囲の支えもあり、前向きに生きようと努力します。過酷な試練と闘いながらも、医学部進学を目指すなど、自分の人生を懸命に生きようとする拓人。そんな彼に、大きな決断の時期が訪れます。それは、「人工呼吸器を付けるか否か」。拓人に1日でも長く生きてほしいと願う友人や恋人は、呼吸器の装着を願いますが、果たして拓人の出した答えは――。と言うストーリーです。


病気に負けない心を伝えてくれたドラマ

主人公の澤田拓人は、就職活動に励む大学4年生で、まだ22歳。一般的に、年齢層が高くなるほど、発症者数が増える傾向にあるALSですが、10代・20代で発症するケースもあります。22歳と言う年齢は人生の中でもっとも輝かしい年頃のはず。そんな絶頂期において発症したにもかかわらず、主人公はあくまで前向きに人生を生きようと闘います。また、彼の周囲にいる家族や友人、恋人の温かいサポートも胸を熱くします。




ギフト 僕がきみに残せるもの

(『ギフト 僕がきみに残せるもの』公式サイトより)

『ギフト 僕がきみに残せるもの』は、ALSを発症したNFLのスター選手のビデオレターをもとに制作されたドキュメンタリー映画です。2016年米国開催のサウス・バイ・サウスウエスト(さまざまな映画・音楽に関する賞を決定する一大イベント)で観客賞に輝いた「Gleason」を映画化したものです。

生まれてくる子どもに残すビデオレター

スティーヴン・グリーソンは、NFLのスター選手。奇跡のプレーで台風被害に意気消沈した市民を湧かせるなど、スターひしめくアメフト界でも彼の存在は特別でした。そんな彼もアメフトを引退、愛する妻と平穏な生活を送っているところへ、襲ってきたのが難病のALSでした。

発症後、妻の妊娠が発覚します。やがて父親となる彼は、生まれてくる息子のために自分の生き様を記録に残そうと決意します。そうして誕生したのが、1500時間にも及ぶビデオダイアリーでした。


4年間1500時間にも及ぶ記録

我が子に向けて撮影を開始したグリーソンの記録は、4年間計1500時間にも及びます。撮影者は本人だけでなく、家族や友人も含まれます。本人撮影のビデオダイアリーがもとのドキュメンタリーですので、主人公を演じるのはもちろんグリーソン自身。そこに展開されるストーリーには、きれいごとだけではない、ありのままの家族の姿が映し出されています。本編では、グリーソンを支援するパール・ジャムのエディ・ベダーも出演、劇中の音楽も手がけています。彼を支える家族や仲間の存在にも注目したいドキュメンタリーです。

『ギフト 僕がきみに残せるもの』は、2017年8月19日公開予定です。機会がありましたら、ぜひ映画館に足を運んでその感動を味わってください。


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今回は、ALS患者さんを描いた映画・ドラマをご紹介しました。中にはフィクションの作品もありますが、作品を通して伝わる真実というものもあります。それはALS患者さんを取り巻く現状の厳しさだったり、患者さんを支える周囲の家族・友人知人の大切さだったり、または病気を前にしてもあきらめず生きる姿勢だったり、ALS関係者以外の人々が見ても強く響くものがあります。これらの作品がひとりでも多くの人々の目に触れることで、ALSへの関心が高まってほしいと願うばかりです。
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