
今回は、先日の記事でも少し触れた呼吸障害を持つ患者さんを対象に実施される呼吸リハビリテーションの方法をご紹介します。呼吸法の工夫や痰を出すトレーニングを行う呼吸理学療法や、筋肉と体力の増強を図って息切れを防止する運動療法、または自宅でも簡単にできる呼吸訓練用器具やグッズなど、呼吸機能の改善・回復に向けたアプローチ法はさまざまです。
呼吸トレーニング

肺や気管支に障害を抱えた患者さんは、満足に呼吸できないばかりか、呼気や吸気の動作にも苦痛を感じます。横隔膜などの呼吸筋を上手に使うトレーニングを続けることで、呼吸時の困難感を軽減します。
口すぼめ呼吸

口すぼめ呼吸は、口をすぼめて息を吐く呼吸法です。口をすぼめることで口内と気道に陽圧をかけ、空気の通り道を広げる狙いがあります。
1.鼻から息を吸い、口から吐き出します。この際口をすぼめて、ゆっくりやさしく空気を出すようにします。
2.次の呼吸は、1回目よりゆっくり時間をかけて息を吐き出します。この際、強く吹いたり、無理をして長く吐き続けたりしないことが大切です。
息吐きをしっかりコントロールすることで、無理のない楽な呼吸を実感できます。
腹式呼吸
この呼吸トレーニングでは横隔膜を使います。横隔膜を積極的に稼動させることで、呼吸の効率性を高め、疲労感や困難感を取り除きます。また大きく深い呼吸が可能となり、酸素を二酸化酸素に変換する肺胞の機能アップにつながります。1.仰向けに寝て、両手をお腹の上にのせます。
2.「1,2」のリズムで鼻から息を吸います。その際、お腹の膨らみと同時に手が浮き上がるならば、腹式呼吸に成功している証拠です。(お腹が膨らむ実感がなければ、おそらく胸で呼吸しています)
3.「3,4,5」のリズム息を吐きます。この際、口すぼめ呼吸で吐くこと。手で腹部を軽く抑える、または本などの軽い重りを置いて実施するのもいいでしょう。
腹式呼吸は、力を入れず、楽な呼吸を意識してください。訓練中に息切れを感じたら無理をせず休むことも大切です。
排痰法

呼吸介助法
介助者が患者の胸部に適度な圧迫を加えつつ、痰を移動させるのが呼吸介助法です。介助作業の前に、触診によって患者さんの胸郭の運動方向と呼吸のタイミングを入念に調べます。そして、胸郭の運動方向に沿うかたちで、絞るように手技を施します。この方法を実施することで患者さんの呼吸の酸素負担が減り、痰の排出も楽になります。体位ドレナージによる排痰
体位によって排痰を上手く処理する方法です。仰向け体位

横向き体位

肺の外側にある痰を移動しやすくします。
うつぶせ体位

ハフィング
上で紹介した体位排痰法でのど元に上がってきた痰を排出するとき、このハフィングという手法が重要になっています。ハフィングは、「ハッ!ハッ!」と声を出さずに勢いよく呼気しながら痰を吐き出す方法です。押し上がってきた痰を、最後は咳によって吐き出します。咳で上手く吐き出せないときは、無理をせず、もう一度、体位排痰からやり直すのが最善のやり方です。運動療法

ストレッチ
胸郭が広がっていくことをイメージして体を適度に動かします。息を吸いながら伸びをしたり、屈伸したりした後、息を吐きながらもとの位置に戻す運動がメインです。首の前後運動や肩や腕の上下運動、体幹運動、屈伸運動などは、呼吸に合わせてゆっくり筋肉を伸ばすのがポイントです。筋力トレーニング
手足の筋肉を積極的に動かすことで、体力の増強と筋肉の向上を図ります。腕の運動

足の運動

背筋のトレーニング

腹筋のトレーニング

全身持久力トレーニング
心肺機能を高めることを目的に、スポーツ選手などが重視する全身持久力トレーニングもまた、呼吸障害患者の呼吸リハビリに応用されています。ジョギングなどの有酸素運動は、全身の筋肉のポテンシャルを高めると同時に、呼吸器系の器官や循環器系の動きを活発にさせます。呼吸器系疾患を抱えた患者さんが本格的な運動を試みるのは難しいので、歩行訓練で下半身を鍛え、スタミナアップを図ります。足腰の筋肉の働きが良くなれば、酸素の吸気効率が改善され、呼吸困難感の緩和に期待が持てます。
トレーニングまずは1日15分歩くことを目指し、慣れてきたら、20分、30分と歩く時間を増やしていきます。ただし、頑張りすぎると心臓に過度の負担をかけるため、主治医や理学療法士に相談しながら自分に適したトレーニング時間を決めていきます。
呼吸リハビリグッズを使った方法

トリフローⅡ
