今日はクリスマスイブですね。2014年も大詰めで、当社も本年の営業日は本日を入れてもあと3日です。何とか年は越せそうですが、年初に立てた計画に対して未達部分が多く、今年も反省をしながら、年末年始を過ごさなければならない…そんな様相です。
さて、既に皆さまご存知の通り2014年11月25日にこれまでの薬事法が大きく変わりました。
今回の記事では、わたしたちのように医療機器の開発・製造を手掛ける企業に取って改正薬事法がどのように変わったのか?、どのような影響を受けるのか?をお話していきたいと思います。
そもそも法律の名前が変わった!
第一のポイントは、そもそも法律の名前が変わったということです。これまで医療機器に関わる法律は「薬事法」という名前でしたが、新しい法律の名前は
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
というようになりました。
ちょっと長いですね。今までの薬事法の3文字に比べたら相当長いです。そのため、
医薬品医療機器等法
と略して呼ぶようです。また、別のニュースや関連情報によると更に略して
薬機法
「やっきほう」?と読むんですかね。医薬品の「薬」と医療機器の「機」を取ったようですが、これは略し過ぎかも知れません。いずれにしましても、今後は「薬事法」という呼び方はなくなりますので、ご注意ください。
では、なぜ法律の名称を変えることになったのでしょうか?簡単に言えば、医薬品と医療機器の品質等に関する法律を一括りにするのは無理があるね…という流れかと思います。当然ながら、医薬品も医療機器も医療の現場で使用され、人の生命に関わる重要物であることには変わりはないのでが、持っているモノの特性は明らかに異なります。医薬品は人の体内に入り、病気の対処をするいわゆる消耗品であるのに対し、医療機器は機器と呼ばれるだけあり機械的要素も含んだモノになっております。このようにそれぞれの特性に合わせた品質管理や安全性、有効性を規制しなければならないと考え、まずは名称からしっかり変えよう、そんな意図が感じられます。
また、実際の法律の中身についても、製造販売業、製造業に関して、医薬品や医療機器と章立てを変えて、それぞれの特性に合わせて規定されるようになりました。
製造業は許可制から登録制へ
実は当社に取ってはこの改正がもっとも影響が大きいと考えております。これまでの薬事法では、医療機器を製造するためには、都道府県の薬務課に申請し、構造設備規定に基づき製造所を整備し、実地調査を受けて初めて医療機器製造業が取得できるという規定でした。実際に当社もちょうど1年前の2013年12月に医療機器製造業の一般区分を所得しております。今回の改正では、これまでの許可制から登録制に変更になり、医療機器製造業は原則実地検査がなくなり、改正前の許可制に比べ、提出書類も若干簡素化されているようです。更には、製造業許可を得るための手数料が埼玉県の一般区分では79,100円必要だったのですが、(当社も支払いました…)改正後は、登録の手数料として38,300円となるようです。(埼玉県での登録時に必要な手数料、他の都道府県では若干手数料が異なります)約半額です。しかも区分による金額差はなく、一本化されるようです。
色々書きましたが、つまり医療機器製造業の要件が簡素化された、ということであります。では、なぜこのように製造業許可が簡素化され登録制になったのでしょうか?2つの切り口で考えてみたいと思います。
まず1点目として、この理由を考える上で「医薬品の製造業は従来通り許可制である」ということがポイントになるかと思います。先にもお話しましたが、医薬品と医療機器はモノの特性が異なりますので、当然ながら製造するプロセスも大きく異なります。当社のように手術器具を製造するプロセスは、金属を切った、削った、曲げた等の加工工程やネジやボルトを用いた組立工程等で構成されます。一方で、私が10年前に手掛けた医薬品(注射製剤)の製造プロセスは、原薬を水に溶かし込み、フィルターを通して無菌化しバイアル瓶に充填、その後、ゴム栓でフタをするような工程を経て、製品化されます。まったく違いますね。もちろん、医療機器もモノによっては医薬品並に工程管理しなくてはならない製品もありますし、機器の特性によってそれぞれ製造プロセスは多様ですが、一般的に考えて、更に比較論として、医薬品の製造プロセスの方がより厳重に製造・品質管理が必要になるのではないかと思います。そのような背景からも医療機器は登録制になったのではと考えています。(正確に言いますと「体外診断用医薬品」は今回の改正で製造業は登録制に変更)少々誤解があるといけないので補足しますが、医療機器の製造・品質管理が甘いと言っているのではありません。あくまで比較論です。医療機器においてもQMS(医薬品で言えばGMP)という製造・品質管理を行う規定が存在しますので、対象製品はその規定に基いて、適切な管理がされています。
次に2点目として、「規制緩和」ということも考えられます。アベノミクスでも言われておりますが、医療機器の産業は日本の経済成長を牽引する分野として注目されています。その産業をより活性化させるためには、ある程度の規制緩和は必要であり、医療機器分野の製造の担い手を増やすことを目的に、許可制から一つハードルを下げて登録制に改正したのではと考えています。
このように医療機器製造業は許可制から登録制に変更になった一方で、製造販売業は従来通りの許可制であり変更はありません。基本的に市場への出荷が許されるのは製造販売業だけですので、その企業が製造・品質管理をしっかり行えば、製造業は登録制にしてもOKという見方もあるかも知れません。当社も将来的には製造販売業を取得したいと考えておりますが、もう少し時間を要しそうであります。
その他の改正事項
法律の名前が変わった、製造業が登録制になったという事項の他にも医療機器の承認・上市を迅速に行えるように規制を簡素化され、QMS調査を個別製品ごとから製品群に括っておこなうように合理化する等、今回の改正では多くの規制が変りました。
以上、今回は薬事法の改正において、わたしたちのような医療機器の開発・製造に携わる企業にどのような影響を及ぼすかを考えてきました。取り分け、当社が気になるのは、製造業の登録制のことであり、こうなってくると、新規参入企業が増え、競争が激しくなることが予想されます。日本経済という視点でマクロ的に捉えれば良いことだとは思いますが、当社のように小さな企業に取っては、ライバルが増えてしまい、困ったなと正直思う部分もあります。しかしながら、当社はこれから新規参入してくる企業よりは確実に前を走り、事業経験も積んでいるので、それらをベースに今後も気持ちを新たに頑張っていきたいと思います。
なお、改正の背景や変更内容は厚生労働省や各都道府県の薬務課のホームページ等にてご確認ください。