一般医療機器 非能動型呼吸運動訓練装置

LICトレーナー

本品はALS等の神経筋疾患における呼吸筋低下による肺の虚脱に対して行われる呼吸理学療法であるLIC練習 (Lung Insufflation Capacity: LIC) に使用する医療機器です。

平成27年度 医療機器等試作品コンテスト 準グランプリ受賞平成27年度 医療機器等試作品コンテスト 準グランプリ受賞
医療機器届出番号 11B3X10044000001
特許出願中 特願2016-109754

LIC TRAINER 開発の背景

神経筋疾患の患者さんの生命予後には、呼吸や咳嗽に必要な筋力低下によって引き起こされる呼吸障害が大きく関係します。病状が進行すれば肺活量が低下し、結果として胸郭や肺の柔軟性が損なわれ、呼吸障害が発生します。

現在、患者さんの呼吸障害に対する医療ケアは、非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation ;NPPV)や気管切開下で行われる侵襲的陽圧換気療法(tracheostomy positive ventilation ;TPPV)等の人工呼吸器を用いた対症療法が行われています。また、患者さんは、呼吸障害により肺の拡張など胸部の活動量が減少することから、肺や胸郭のコンプライアンス(柔軟性)が著しく低下することが知られています。肺および胸郭のコンプライアンスの低下は、患者さんの息苦しさや疲労感、および不安や精神的苦痛を増強させるため、コンプライアンスを維持することが安楽や生命後に望ましいため、適切な呼吸リハビリテーションが必要となっています。

神経筋疾患の患者さんに対する呼吸リハビリテーションは、これまで慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease ;COPD)に対して行われる腹式呼吸や呼吸介助等が同様に行われていました。しかし、肺が虚脱し拘束性換気障害を起こしている患者さんにおいては、安楽が得られず、また有効性を示すことが困難でありました。このような中、近年は有効な呼吸リハビリの1つとして、最大強制吸気量(Maximum Insufflation Capacity ;MIC)の測定を実施することで肺を加圧することがリハビリとなるとして、臨床現場では、本手法による肺や胸郭の柔軟性(コンプライアンス)の改善が実践されています。しかし、MICはair stack(息止め)する能力が不可欠であるため、陽圧に慣れていない患者さんや球麻痺を起こしている患者さん、また気管挿管や気管切開をした患者さん等の呼吸障害が進行した場合には実施できないという問題点がありました。その解決策としてBach(2008)らが提唱した一方向弁を利用した最大強制吸気量(Lung Insufflation Capacity: LIC)があり、国内の先進的な医療機関でも実践されるようになってきています。これはair stack(息止め)ができない患者さんに対しても一方向弁を利用することでMICかそれ以上の吸気量が得られることから、安全かつ多くの患者さんに使用できることが期待されています。

しかしながら、LICは専用の機器がなく、各医療機関でいくつかの人工呼吸回路を組み合わせた自主製作機器が利用されていたため、一般化が難しく、多くの患者さんへ積極的に導入できるものではありませんでした。そこで、LICを有効的かつ安全に実践できる呼吸リハビリテーション機器の開発が行われ、誕生した機器がLICトレーナーであります。

LIC TRAINERの原理

LICトレーナーは①治療機能と②評価機能の2つ機能を有しています。

治療機能

LICトレーナーは、本体の一次側(IN)に蘇生バック(別売)を、二次側(OUT)にマスク(別売)を装着し、呼気ラインを患者さんまたは補助者さんが手指で押え蘇生バックで加圧します。加圧する際、本体内に内蔵されている一方向弁により息止めができない患者さんに対しても陽圧を保つことができます。患者さんが耐えうる最大圧まで加圧したのち患者さんまたは補助者さんが呼気ラインを開放することで、患者さんの肺胞を膨縮させ、肺及び胸郭の柔軟性を維持・改善します。

評価機能

LICトレーナーは、二次側(OUT)とマスク(別売)の間に簡易流量計(別売)を装着することで、患者さんの最大強制吸気量(Lung Insufflation Capacity: LIC)を測定することができます。

LIC TRAINERの特徴

LICトレーナーは高い圧力でもリークしない気密性を有しています。

有効性

LIC練習の有効性は、患者さんに適切な陽圧をかけることで、肺や胸郭の柔軟性(コンプライアンス)が維持・改善されます。そのため、LICトレーナーは、高い圧力でもリークしない気密性を有しております。また、air stack(息止め)ができない患者さんに対しても陽圧を保てる一方向弁が内蔵されております。

LICトレーナーは高い圧力がかかると自動脱気する安全弁がついています。

安全性

LIC練習の特徴は患者さんの肺に陽圧をかけることであるため、想定されるリスクとして肺損傷が考えられます。そのため、LICトレーナーは、安全に呼吸リハビリが実施できるように60cmH2O以上の高い圧力がかかった際に自動的に脱気する安全弁を組み込み込んでおります。

LICトレーナーは患者が呼気開放のタイミングをコントロールできるようにチューブがついています。

使用性

LIC練習は患者さんに適切な陽圧をかけた後、呼気解放し、肺や胸郭の柔軟性(コンプライアンス)の維持・改善を行います。この呼気解放は、患者さん自身が解放までの圧力、タイミングをコントロールできるように呼気ラインが装着されております。また、患者さん自身が呼気ラインを指で押さえることができない際は、呼気ラインを取り外し、補助者さんが呼気解放をコントロールすることも可能です。

適応と開始目安

適応疾患

LIC練習は筋萎縮性側索硬化症等、運動神経の障害による進行性の呼吸筋麻痺で、胸郭運動が低下し、十分な吸気および呼気が行えず肺活量の減少が生じる拘束性喚起障害の患者さんへ適応があります。

LIC練習が適応となる主な疾患は以下のとおりです。

  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  • 筋ジストロフィー
  • ミオパチー
  • 高位脊髄損傷
  • 重症筋無力症
  • ポンペ病
  • 脊髄性萎縮症(SMA)
  • ギランバレー症候群
  • ポリオ後症候群
  • ニューロパチー
  • パーキンソン病および関連疾患
  • 両側横隔膜神経麻痺

開始の目安

「深呼吸ができないと感じたとき」

LIC練習の開始の目安は、定期的な呼吸評価の中で、標準肺活量(%VC)80%以下、または肺活量が2000ml以下になった際、導入をお勧めします。また、LIC練習は症状の進行の過程でも適応が可能です。発症初期や進行期の適応に加え、症状が進行し球麻痺症状や気管切開している患者さんへの適応もあります。

LICトレーナー使用可能期間
LIC開始の目安
肺活量: 2000ml
%VC: 80%以下
NPPV
非侵襲的人工呼吸器
使用開始
TPPV
侵襲的人工呼吸器
使用開始

気管切開

肺活量 %VC

病気の進行度

LIC練習の副作用(相対的禁忌)

LIC練習は肺実質(慢性閉塞性肺疾患[COPD]、肺気腫、ブラ、気胸の既往)に問題のある場合は行わないでください。

LIC練習の実施は必ず主治医と相談し、理学療法士等、適切な指導の下、実施してください。

導入の流れ

LICトレーナーは導入検討を目的とした
レンタルサービスを実施中です。
これまでになかった、新しい呼吸
リハビリを実感してください。

患者

Patient

医療機関

Medical Institution

STEP. 1

LICトレーナーに興味を持ったら

INTEREST

患者さんは、LICトレーナーの使用に興味を持ったら資料をダウンロードし、主治医、理学療法士とご相談ください。LICトレーナーは肺や胸郭に空気を送るリハビリ手法のため、患者さんそれぞれの肺の状態を確認してから使用する流れになります。必ず主治医への確認を行ってください。

主治医・理学療法士に相談
01

STEP. 1

LICトレーナーに興味を持ったら

INTEREST

医療機関において、LICトレーナーの導入に興味を持ったら、レンタルサービスへの申し込みを検討ください。実際の機器に触れ、患者さんに使えるかどうかを確認いただけるサービスです。

レンタル申込検討
01

LIC冊子をダウンロードしてLICトレーナーの使用方法を確認してください。

LIC冊子、カーターテクノロジーズのYouTubeチャンネル、Webなどから使用方法を確認してください。

LICトレーナーの取扱説明書のダウンロードはこちらから。

LICトレーナーの使い方がわかる冊子はこちら

ダウンロード
LICトレーナーの取扱説明書のダウンロードはこちらから。

LICトレーナーの使い方がわかる動画はこちら

カーターチャンネルへ

国立精神・神経医療研究センター プレスリリース

こちらの資料も参考にしてください。

http://www.ncnp.go.jp/press/release.html?no=122

STEP. 2

主治医・理学療法士に相談

CONSULTATION

患者さんは、ダウンロードした資料を持って、主治医・理学療法士に相談に行きましょう。患者さんの肺や呼吸の状態を主治医に確認いただき、LICトレーナーの適用可能と判断を得てから、ご購入を検討ください。

02

STEP. 2

患者さんへの適応判断

JUDGEMENT

患者さんからLICトレーナーの紹介を受けた主治医・理学療法士は、担当患者さんがLIC練習の適応の判断をしてください。

担当患者さんへの適応判断
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LICトレーナー
レンタル申込み

RENTAL

レンタルサービスは、LIC練習に必要な本体、マノメーター、直接コネクター、マスク、アンビューバッグ、気管切開カニュレ、バクテリアフィルター等を準備しております。各器具のレンタルは必要に応じて調整できますので、販売店へご相談ください。

STEP. 3

医療機関にてLIC練習を行ってください

LIC TRAINING

実際に患者さんに使ってみてください。
使用する際は、理学療法士や看護師などの医療従事者がLICトレーナーを操作してください。

※製品の取扱いは冊子や動画をよく見て、十分にご注意ください。

LIC練習実践
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STEP. 4

レンタル期間終了後、返却

RETURN

レンタル期間が終了した後、速やかにLICトレーナーを指定の場所へ返却ください。

レンタル製品返却
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STEP. 3

製品購入

PURCHASE

主治医、理学療法士と相談し、LICトレーナーが問題なく使用できると判断でき、今後も使用したい場合、患者さんは自分専用のLICトレーナーを購入し、在宅での利用を検討ください。 在宅使用の際は、訪問看護ステーション等の協力も得ながら、継続的にLIC練習を実施してください。 購入は、販売店へお問い合わせください。

製品購入
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STEP. 5

製品購入

PURCHASE

医療機関として、LICトレーナーを導入したいとのご希望がありましたら、お見積り、購入に関しては、販売店へお問い合わせください。

製品購入
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LICトレーナーの取扱説明書のダウンロードはこちらから。

無料のLICトレーナー冊子はこちらから

ダウンロード

使い方

LICトレーナーをご使用の際には、以下のフローに従って、適切に使用ください。

Preparation

準備

組立に必要なもの

LICトレーナー本体
LICトレーナー
バックバルブマスク
バックバルブマスク (別売)
マスク
マスク (別売)
直接コネクタ
直接コネクタ (別売)

組立方法

組立方法1
01. INにバックバルブマスクを取付け
組立方法2
02. OUTに直接コネクタとマスクを取付け
組立方法3
03. リリーフ弁に呼気ラインを取付け
組立方法4
04. 完成

Before Using

使用前

使用前にかならず確認すること

  1. 主治医の許可・指示が必要
  2. 理学療法士等、指導・相談を行い実施
  3. LICトレーナーは個人使用
  4. 使用する前に安全弁の作動を確認

LICトレーナーの安全弁点検方法

安全弁点検方法1
01. 安全カバーを外す
安全弁点検方法2
02. 安全弁を取り出す
安全弁点検方法3
03. 安全弁のパッキンと同部のバネ部分が固まっていないかを確認してください。固まっている場合は指で弁部を押し上げて動作することを確認してください。
安全弁点検方法3
04. 本体のOUTをゴム栓 (別売) 等で封印し、呼気ラインを指で抑えながら、蘇生バックで加圧します。その際、安全弁が動作することを確認してください。
関連動画リスト
01. 準備編
02. 組立・点検編

Rehearsal

予備練習

まずLICトレーナーの特徴を体感しましょう。

バックバルブマスクを使わず、マスクをしっかり密着させ、リリーフ弁を開放すると息を吐けることを実感しましょう。

※ LIC練習は食事をした直後は避けましょう。

予備練習1
息を吐きながら呼気ラインを開閉すると空気が逃げる
予備練習2

少しずつ陽圧に慣れる練習をしましょう。

次にバックバルブマスクで1回加圧し、陽圧が入ってくるのを確認し、リリーフ弁を開放すると息が吐ける感覚を覚えます。

陽圧に慣れてきたらバックバルブマスクを数回加圧し、LICの練習となります。肺活量よりもLIC練習で得られる換気量が多くなれば良いLIC練習になります。

予備練習1
バックバルブで1回量程度から始めましょう
呼気ラインを開閉してみましょう
予備練習2
関連動画リスト
03. 予備練習編

耳がキーンと痛くなった場合

肺にうまく空気が入らず、口がふくらんでいる場合、耳に圧がかかるため、そのような症状が出ます。バックバルブマスクの加圧を緩めたり、肺に空気をいれるため喉の力を抜くようにするとうまくできます。

Practice

実践練習

LIC練習の実施方法

LIC練習は二通りの実施方法があります。自分でリリーフ弁を押さえられる対象者は呼気ライン(チューブ)を使用してください。 自分でリリーフ弁を押さえられない対象者は、呼気ラインを(チューブ)を外し、実施者にリリーフ弁を閉じてもらってください。

実践練習1
リリーフ弁を押さえられる方
実践練習2
リリーフ弁を押さえられない方

01. キツくない範囲で3〜4回程度加圧しましょう。

実践練習1

02. 対象者が「もう限界」というところで、リリーフ弁を開放しましょう。

実践練習2

03. 肺に送り込まれた空気を最後まで吐き出しましょう。

実践練習3
関連動画リスト
04. 実践練習「リリーフ弁を対象者が操作」編
05. 実践練習「リリーフ弁を実施者が操作」編

After Using

使用後

使用後のお手入れ方法

LICトレーナーの使用後は、本体、呼気ライン、マスク、直接コネクタについては分解し、温水ですすぎ洗浄を実施してください。 その際、本体を洗浄する際は、安全弁を取り除いてください。(安全弁を水につけると動作不良が発生するおそれがあります) 洗浄後は、水をよく切り、陰干しで乾燥してください。

使用後のお手入れ1
使用後のお手入れ2
使用後のお手入れ3

※これらの写真は洗浄イメージです。実際には温水ですすぐなど部位に応じて適宜洗浄を行ってください。

名称 お手入れ頻度 洗浄方法 備考
LICトレーナー本体 使用毎 温水ですすぎ洗浄 安全弁は取り外すこと
呼気ライン (チューブ) 使用毎 温水ですすぎ洗浄
安全弁 使用毎 きれいな布で清拭
直接コネクタ 使用毎 温水ですすぎ洗浄
マスク 使用毎 温水ですすぎ洗浄
バックバルブマスク 1週間毎 きれいな布で外装を清拭

※別売り部品については当社が推奨するお手入れ方法を記載しました。各メーカー様の添付文書等も確認の上、お手入れを実施してください。

関連動画リスト
08. お手入れ編

Accessories

付属品

LICトレーナーの付属品 (別売り)

LICトレーナーはいくつかの付属品を取付けて使用できるように設計されております。
必要に応じて機器を準備いただき使用するようにしてください。

なお、下記に示す付属品は別売りになりますので、ご了承ください。

マノメータ

LIC練習時の圧力の目安として使用します。
主に陽圧の管理が必要な患者さんに対して使用します。

使用後のお手入れ1
使用後のお手入れ2

LICトレーナーのOUT側に本体とマスクの間に装着して使用します。

簡易流量計

どのくらい肺に空気が入ったか量を測定するために使用する流量計です。
主に医療機関において肺機能の評価を使用します。

使用後のお手入れ1
使用後のお手入れ2

LICトレーナーのOUT側に本体とマスクの間に装着して使用します。

関連動画リスト
06. 実践練習「マノメータ」編
07. 実践練習「簡易流量計」編

気管切開・気管挿管患者さん向け付属品

LICトレーナーは気管切開・気管挿管している患者さんへの適用もあります。別売りのフレクションチューブを気管切開カニューレと接続し、LICトレーナーの本体のOUT側にフレクションチューブを接続することで、使用できます。

使用後のお手入れ1
使用後のお手入れ2

FAQ

LIC STORY

少しでも呼吸状態が良くなりたいという想いでLICトレーナーを使用する患者さんたち
患者さんへより良いリハビリを届けたいという想いでLICトレーナーを使用する医療従事者たち
有効で安全で使いやすく、医療現場の声を実現したいという想いでLICトレーナーを開発した技術者たち
それぞれ立場は違いますが、LICトレーナーにはそれぞれの人たちの熱い想いがあります。
そんな想いをLIC Storyとしてご紹介します。

LICトレーナーのお問い合わせ

LICトレーナーのレンタルサービス及びお見積り・ご購入のお問い合わせは
販売店へお問い合わせください。

販売会社 株式会社 星医療酸器 営業本部
担当部署 呼吸器領域リレーション推進プロジェクト
担当 加藤 正行
お問い合わせ 03-3899-6511 (平日9:00~18:00)
メールアドレス katoh.masayuki@hosi.co.jp
お見積り・ご購入のご依頼