ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者さんの生活は、治療だけで多額の費用を必要とし、患者さんを支える家族の負担も小さくはありません。そんなALS患者さんやそのご家族を支援するために、国・自治体などはさまざまな助成制度を設けています。
これらの支援制度を有効に活用するためにも、細かいサービス内容や条件、申請に必要な手続き情報をしっかり押さえておいてください。

特定疾患医療受給者証について



特定疾患医療受給者証とは、国指定の難病を患った人を対象とする支援制度です。2015年1月1日から110疾患に拡大され、制度内容も一部変更されました。

申請方法

住所地を管轄する保健所へ申請し、認定されれば治療費の助成が受けられます。ALSは国が指定する特定疾患に該当するため、医師に診断されたら管轄の保健所に申請し、受給者証を交付してもらいましょう。

利用者負担の割合

ALS治療に要した費用の一部を国や自治体が負担してくれます。基本的に医療費の自己負担は2割ですが、世帯収入によって自己負担の上限額が異なります。軽症の場合はどの程度負担すれば良いか、自治体の窓口に問い合わせてください。

通常の生活動作が困難なほど症状が悪化すれば、保健所に重症患者認定申請書を提出します。身体障害者手帳1、2級の交付が受けられ、医療費の全額を負担してもらえます。

申請から交付まで

まず、管轄の保健所で申請書と診断書の用紙をもらいましょう。診断書を医師に作成してもらい、住民票・申請書とともに保健所に提出してください。

1.ALS診断

2.申請書と診断書用紙の交付(保健所で)

3.医師による診断書作成

4.申請書作成

5.住民票と一緒に申請書と診断書を保健所に提出

6.認定・特定疾患医療受給者証の交付

特定疾患医療受給者証には有効期限があります。保健所の窓口に申請した日から直近の9月30日までと決まっていて、たとえば8月に申請して認可されても2ヶ月弱しか使えないことになります。9月30日を迎えたら、再度の申請が必要です。

身体障害者手帳について



特定難病であるALSの診断を受ければ、身体障害者手帳の交付が受けられます。ただし、18歳以上にならないと申請はできません。

申請方法

市区町村の福祉事務所で申請手続きを行います。必要書類は以下の3点です。

● 身体障害者手帳交付申請書

● 身体障害者診断書・意見書(身体障害者福祉法第15条に基づき医師が記載)

● 本人写真(縦4㎝×横3㎝)

サービス内容

身体障害者手帳を取得すると、障害の程度によってさまざまな福祉サービスが受けられます。その主な内容は以下の通りです。

● 各種税の減免

● 電車や飛行機m高速道路などの割引サービス

● 日常生活に用いる道具の支給サービスまたは修理

● ホームヘルパーなどの介護サービス

このほか、手帳に記載された障害のレベルに合わせてさまざまなサービスが受けられます。

申請から交付まで

身体障害者手帳の交付を受けるには、まず市区町村の福祉事務所で「交付申請書」と「身体障害者診断書」用紙をもらってください。その後、都道府県認定の医師に診断書を書いてもらうことになります。

1.福祉事務所で交付申請書と身体障害者診断書の用紙をもらう

2.指定医師に依頼し、身体障害者診断書を書いてもらう

3.申請書・診断書・写真を持って福祉事務所へ

4.身体障害者手帳の交付。サービスの開始

ちなみに、身体障害者手帳を取得すればALSとは関係のない、ケガや風邪などの治療でも医療費の助成が受けられます。ただし、市区町村によってサービスの仕組みが異なるので、詳しくは最寄りの福祉事務所窓口にお尋ねください。

障害者福祉サービスについて



障害福祉サービスとは、2006年に制定された障害者自立支援法にもとづく支援制度です。身体障害や知的障害、特定難病などの患者さんの介護や就労支援を目的としてさまざまな助成サービスを提供します。

サービス内容

障害者や難病患者の自立支援を目的とした同制度の給付内容は、大きく「介護給付」「訓練等給付」「自立支援医療」「補装具費の給付」に4分類されます。ALSと診断されたら、自立支援法にもとづき、在宅介護サービス、ショートステイ、重度障害者に関するさまざまな行政サービスが受けられます。

申請から交付まで

障害者福祉サービスを利用するには、まず市区町村の福祉課に利用申請書を提出してください。審査を受け、認定されば各種サービスが受けられます。

1.市区町村福祉課に相談

2.市区町村の窓口で申請

3.市区町村で障害程度を審査

4.認定を受ければ、「障害福祉サービス受給者証」の交付

障害福祉サービスの利用者負担は原則1割ですが、サービス量やその内容、所得によって異なるケースもあります。サービスの目的・内容は、利用者にヒアリングして作成した介護サービス事業者のプランに沿うものとなります。

介護保険について



介護保険は65歳以上を対象とした介護サービスですが、ALSと診断されたら40歳以上から利用できます。

介護保険の利用者負担

すべてのサービスにおいて、利用者の自己負担は1割です。ただし、認定レベルを超えたサービスは全額自己負担となります。また、施設サービスを受けると食費や生活に必要な諸々の費用は自己負担となるケースがあるので、詳しくは介護事業者や福祉事務所にお問い合わせください。

申請から認定まで

まず、市区町村の窓口で申請書用紙をもらいます。年齢区分によって手続き方法が異なる点に注意が必要です。

1.市区町村の窓口で申請書をもらう

2.申請書と介護保険被保険者証を市区町村窓口に提出(40歳~64歳の人は医療保険被保険者証を提出)

3.要介護度を調査員が調査。その結果にもとづいて市区町村が判定

4.認定の通知

介護保険の認定を受ければ、デイサービスやホームヘルプサービス、訪問リハビリテーション、あるいは認知症患者を対象とした地域密着型の介護予防サービスなど、さまざまなサービスを利用できます。細かい内容は市区町村によって異なるため、管轄の自治体窓口にお問い合わせください。

その他の支援制度



上記でご紹介した支援制度のほかにも、ALS患者さんが利用できるさまざまな支援サービスがあります。

● 特定疾患特別介護手当

● 特別障害者手当

● 訪問介護サービスの補助(人工呼吸器療養患者などが対象)

● 生活保護など

これらの支援制度もまた、各市町村によって内容や審査方法などが異なります。申請の際は、管轄の自治体や福祉事務所へご相談ください。