前回の事前相談編①では、事前相談の予約の取り方、更には当社で準備した事前相談用の資料内容について紹介した。今回は、実際に相談に行った際の様子を含め、どのような相談をしたのかを紹介する。
当社では、事前相談に際して確認したい事項が大きく分けて3点あった。その項目は以下の通りである。
①アパートの一室で医療機器製造業(一般区分)が取得できるのか?
②製造所名は○○工場や??製造所等とは違う「川口メディカルアトリエ」で良いか?
③現在、計画している製造所に構造設備上の不備はないか?
このような内容を確認するべく、事前相談に向かった。
事前相談ドキュメント
事前相談に行ったのは2013年10月10日。午後からの時間だった。浦和駅から歩いて10~15分程度で県庁に到着。到着後、館内案内図で薬務課の場所を確認し、エレベーターで4Fまで上がり、薬務課の部屋を訪ねた。
「カーターテクノロジーズと申します。本日は医療機器製造業の申請に際して事前相談に参りました。」
最初が肝心と思い、精一杯のさわやかな声で挨拶をすると、どうぞこちらへと銀行の窓口に似たスタイルで、県庁の2名の担当者が奥に座り、カウンター越しに私が手前に座るスタイルで相談が始まった。
私自身少し緊張していたのだろう。名刺を出すのも忘れ、すぐに椅子に座り、準備してきた資料を取り出した。(初めての訪問の場合は、みなさんは名刺を出して自己紹介する方が良いと思う…)
とりあえず事前相談がどのように進むのか分からなかったので、私の方から「いかが進めればよろしいでしょうか?弊社の方で説明用の資料を準備してきたのですが、説明させていただいてよろしいでしょうか?」と聞いたところ、「では、説明してください。」とお返事をいただけた。まず、資料の構成として目次を説明し、流れに沿って、1の会社概要および業務分掌表から説明を開始した。
早速、確認項目の①番であるアパートの一室の話をしてみた。会社概要の中に製造所住所を記載したのだが、当社の川口メディカルアトリエの住所は「柳崎マンション」という建物名が書かれている。そこで実は当社の製造所はアパートの一室を改造して設置しようと考えているのですが、いかがでしょうか?と切り出した。「アパートですか?アパートの1Fにある店舗や事務所等のような施設ではないのですか?」と聞かれたが「思いっきり普通のアパートです」と答えた。担当者の方は困惑した表情を浮かべ…「前例はないと思います。そのアパートに居住しているのですか?」と質問を受けた。「いいえ、居住はしておりません、隣の部屋等には住民はいますが。当社が賃貸している部屋は製造所と事務所としています。」と居住していないことを説明した。この場では、良いとも悪いとも言えないようなので、後日庁内で相談し、回答するとのことになった。
引き続き、資料の説明を行った。申請内容の説明の際に製造所名称の確認を行った。そう「川口メディカルアトリエ」のことである。なぜ、このような名称にしたのかという内容として、工場や製造所と呼べる規模ではないことから、小さな工房をイメージし医療機器を取り扱うので、メディカルアトリエと名付けたことを説明した。製造所名称については、各社自由に設定できるとのことで、この名前は問題ないと判断いただいた。
更に説明を進め製造品目、製造法概要のあたりで少し不安になり「このまま説明を続けてよろしいでしょうか?」と確認したところ、じゃあってことで、数点のコメントをいただいた。特に製造工程の中に書かれていた表示のこと。予定では、2次包装の外装箱に表示を行うと説明したところ、直接製品に表示してくださいとの指摘を受けた。この点は、製品の開発が完了し、製造販売届出書を提出する際に製販業者と検討することとした。
そして、最後の構造設備概要の説明を行った。主に平面図を用いて、各作業室の機能、設備機器の配置を先に説明した製造フローに合わせて話をした。ここでコメントを3点もらった。
①製造エリアと一般エリアは間仕切りに扉を設置し、明確な区分を行うこと。
②試験場所の間仕切りはチェーンポールでは移動できるので、他の方法を考えること。
③保管棚などのふすまは別の素材を検討すること。
これら3点のコメントであった。①については、設計段階では、製造エリアと一般エリアの間には壁を作り、入口はチェーン等で区切ろうと考えていたが、扉を付けることとした。試験場所の区分もチェーンポールではなく、床にエリアを分けるテープを貼り付けるという案で了承をいただいた。更にふすまは…「ふすまダメですか?」と食い下がってみたものの、あまり印象が良くないようなので、他のもので代替することにした。(結果的にはロールスクリーンを使った)
ここまでの相談で約50分が経過していた。相談時間の枠は1社につき1時間のようだった。最後に今後の対応として、業者コードの申請方法を確認した。既に業者コード登録票は入力して持参してきたので、提出できますと言ったところ、後日ファックスで申請して欲しいとのことだった。ただし、その前に①の確認事項である「アパートの一室で」という点を庁内で確認し、後日電話するので、その後に業者コードを申請して欲しいと言われた。「うっ?やはりアパートの一室では許可は取得できないのか?」と不安になった。私の不安の表情に気づいたのだろうか、担当の方は「もうアパートは契約してあるんですよね?」と尋ねられ、「はい、契約済みです。一部リフォームも着手しております」と答えた。翌週には電話しますのとことだったので、しばらく連絡を待つことにし、初めての事前相談は終了した。
全般的な印象だが、やはりこちらから相談内容を準備し、明確に確認すれば担当の方は親身になって教えていただけると感じた。相談開始当初は、私の緊張もありギコチナイ感じでスタートしたが、中盤から終盤にかけては場も和み、良い雰囲気の中で、実りある相談時間を過ごせた。皆さんも許可申請に当って分からないことや不安なことは相談すれば、きっと良いアドバイスをいただけるので、臆せず自社でチャレンジすることをお勧めする。
ただ1点、アパートがダメと言われてしまうと…この不安を抱えて数日間を過ごすことになった。
数日後…
相談に伺った週末はちょうど3連休だった。来週に回答をいただけるとのことだったので、電話を待つこと2日目、水曜日だったと記憶している。県庁の担当の方からお電話をいただいた。結果的にはアパートの一室であっても構造設備規則に準拠していれば問題ないとの回答で、業者コードの申請を行ってくださいとの内容であった。
「よかった…」
実は最悪のケースを想像しはじめていた。アパートがダメだった場合、他の物件を探さなくてはならない、費用はどの程度かかるのか?期間は?年内には許可を取得することを製販業者には約束している…さぁどうするか?色々なシミュレーションを頭の中で行っていたが、杞憂にすぎなかった。
電話をいただいた直後に準備してあった業者コード登録票をファックスした。
業者コードの登録は約1週間で完了し、ファックスにて業者コードが送られてきた。これでようやく申請の準備が開始できる。
以上、事前相談編は今回で完結し、次回からは申請編をスタートする。申請編では、申請書の記載内容や書き方の注意事項の紹介や申請書提出時の様子などを紹介し、解説する。