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 前回までの準備編において、医療機器製造業を取得するための準備に関しては、おおよそイメージが付いたと思う。そこで、今回からは具体的に許可申請へのアクションを当社が行った事例を紹介しながら解説して行く。

1. 事前相談のための事前予約

 まず、申請に際して最初に行うことは、各都道府県庁への事前相談である。事前相談では、現在計画している医療機器製造業の許可区分、構造設備の設計内容、更には製造予定の品目等の情報を説明し、それぞれの項目に対してアドバイスを受けられる。では、とりあえず県庁へ行けばいいんですね…という訳ではない。事前相談に行くためには事前予約が必要である。ということで、早速、県庁の薬務課へ電話をした。
「……」
なかなか電話に出てくれない。ようやく電話が通じて無事に事前相談の予約を取ることができたが、担当の方に「事前相談の電話予約は受付時間内にお願いします」と言われた。電話を切った後に調べてみると、事前相談の予約をするための電話には、受付時間があることが判明した。埼玉県の場合は13:00~14:00が電話受付の時間となっていることから、その時間帯に電話するように対応いただきたい。

2. 事前相談のための資料

 予約電話の中でも、当日、必要な資料を持参するように指示は受けるが、当社の場合は、相談したい内容に応じた説明用資料を準備して訪問した。そこで、当社で実際に準備した資料の内容について、項目ごとに紹介する。事前相談に際して必ずしもこのような資料が必要という訳ではないが、資料があった方が担当者の理解も深まり、充実した事前相談になるはずである。ぜひ、資料を準備することをお勧めしたい。

資料写真

資料1. 会社概要および業務分掌表

 ここでは具体的に自社がどのような事業を行っているのか、また医療機器製造に携わる組織はどのような構成か、更に責任の所在などを明確化するために、会社概要と業務分掌表を資料に盛り込んだ。

資料2. 申請内容

 ここでは①申請者、②製造所、③申請区分の3点について記載した。①申請者は、カーターテクノロジーズ株式会社、住所、電話番号を、②製造所は、製造所の名称、住所、電話番号、③申請区分は「医療機器製造業 一般区分」と記載した。ここで当社が聞きたかったことは、②製造所における名称について。製造所の名称は一般的には○○工場とか○○製造所等となるが、当社の場合は「川口メディカルアトリエ」という製造所名称をつけているため、このような名称が製造所名として申請できるのかを確認する必要があった。結果的に製造所名称は各社自由に設定できるとのことで、予定通りの名称で進めることにした。

資料3. 責任技術者

 この項目では、責任技術者を紹介し医療機器製造業(一般区分)における人的要件に適合していることはもちろんのこと、バックグラウンドを説明することで、医療機器製造を行うために十分な経験や知識があることをアピールした。具体的に記載した項目は①氏名、②生年月日、③住所、④電話、⑤携帯電話、⑥学歴、⑦職歴、⑧人的要件への適合状況、の8項目である。ここで、わたしたちが重要と思ったのは、⑦職歴である。医療機器製造業の一般区分における責任技術者の資格要件は、実務経験を問わず、学歴がメインになる。しかしながら、実際に製造を行う業者として重要なのは学歴よりも寧ろ職歴だと思う。特に当社のように新規申請で、且つ設立間もない企業であると、信用は全て人に掛かってくる。そこで、責任技術者である私自身の職歴を以下のように記載した。


①医療機器の開発製造に携わった経験があること
②外部への製造委託を行った経験があること
③医療機器および医薬品メーカー在籍時に都道府県庁、PMDA等の査察対応をした経験があること


これらの内容を勤務していた会社名、開発・製造していた製品内容、更にはその携わっていた業務時のタイトルを明記した。
次に、⑧の人的要件については、「自分でできた!町工場が医療機器製造業を取得する方法 準備編①」の2.1に記載した5項目について全て該当しないことを明記した。

資料4. 製造品目

 ここでは、これから製造を予定している製品の紹介を記載した。種別、類別名称、コードや一般名称、そして製品の定義とクラス分類さらには、製販業者名と担当する製造工程を明記した。クラス分類は、医療機器分類表(検索すると香川県のホームページが最初に出てくると思う。ここのPDFのリスト)を参考に記載した。製造工程は、自社がどの範囲を担当するのかを記載したが、当社の場合は部品の受入から最終包装工程までは計画していたことから「一貫製造」とした。
次に実際の組立済みの写真と組立前の部品の写真(いずれも試作機のもの)を添付し、製品に対する具体的なイメージができるように配慮した。小さいものだったら持ち込むのが最も良いと考えるが、当社は今回写真で説明を行った。

資料5. 製造工程

 4.の製造品目で説明した製品をどのように製造するのかをここでは記載した。まず、構成部品、表示/包装材料の内容として、それぞれの名称、材質等をリスト化した。次に製造法概略として、工程フローを明記した。工程フローには工程名、作業場所および使用機器、そして実際の製造作業内容を記載し、「何を」「何処で」「何を使って」「どのように」製造するのかを説明し、そのためにはどのような構造設備が必要かという次の話の流れに繋がるように配慮した。

資料6. 構造設備概要

川口メディカルアトリエ_平面図
 いよいよ製造所の具体的な話がここで出てくる。ここからは、実際の医療機器製造業の申請書に近い内容をすべて記載した。最初に概要として、製造所や保管場所、試験場所の面積を記載し、計画中の製造所の平面図を添付した。平面図には、各作業室の名称、寸法、設備機器の名称と配置を盛り込んだ。参考に当社川口メディカルアトリエの申請時に使用した平面図を画像にて添付する。平面図の作製の際、参考にしていただきたい。平面図は、当初CADで書こうと思ったが、パワーポイントでわたしが作図したものを用いた。図形などの挿入モードを使えば、縮尺も数値入力できるので、それなりの図面は書ける。もし、CADがなくて業者に依頼するお金も節約したいという方は、チャレンジしてみていただきたい。またこの他には、製造、試験に使用する設備リスト、製造所周辺の地図および敷地内の建物配置図を添付した。

 そして、実際に当社が行った事前相談では、この構造設備概要の説明および相談にほとんどの時間を使った。平面図を用いて構造設備規則への適合をそれぞれ確認し、修正ポイントのアドバイスを受け、改善案のイメージをその場で固めていった。医療機器製造業許可のポイントは構造設備規則への適合状況になるため、現状の計画案に対して十分な説明を行い、アドバイスを受ける必要がある。よって、この項目の資料作りは十分に行うことをお勧めする。

 以上の内容をパワーポイントで準備し、当日県庁に持ち込んだ。実際に当社が使用した資料を見たい方がいれば問い合わせページより連絡をいただきたい。資料の内容は、開発中の製品概要が含まれているため、その部分はお見せできないが、資料の構成や他の項目について確認できるように加工してお渡しすることは可能である。もちろん資料代金は不要なので、お気軽に問い合わせいただければ幸いである。お問い合わせはこちら

 今回の事前相談編①はこの辺りまでとし、次回の事前相談編②では、実際にこの資料を用いてどのような相談を行ったのか?また、事前相談の次はどのようなアクションになるのか等、実際の相談時の様子をドキュメント的にご紹介しながら解説する。