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正月明けからアッと言う間に1月が終わり、2月がスタートしました。
今年も相変わらずバタバタのスタートを切りましたが、おかげさまで1月は、新規案件のご相談も複数いただきまいした。
更には前回、前々回のブログ記事にて紹介したプレス金型を用いた部品製作の案件のご依頼をいただき、試作の準備に取り掛かっている最中であります。このように紹介した内容が、実際の仕事につながることは非常に喜ばしいことであります。

さて、今回の記事では、前回までの技術的なお話からガラッと変わり、製品開発におけるニーズの考え方について紹介します。

「新しい治療方法を可能にする医療機器が欲しい」

「既存の機器の改良やバージョンアップをしたい」


医療機器のメーカー、ディーラーにて営業を担当されている方の中には、上記のような医療現場のニーズをお聞きになる場面が多いかと思います。実はこのような会話は大変重要な現場の声だと思います。私たちも臨床研究の立合いや機器仕様の打合せでドクターとお会いする機会があるのですが、医療ニーズ…平たく言うと「作りたいものは山ほどある」ような印象を受けます。では、どうしてこのような声が重要なのか、製品開発の切り口で考えてみたいと思います。時期的に来年度の新しい製品開発テーマをお探しの方は、ぜひ参考にしていただければと思います。

医療機器の開発スタイルは「マーケットイン」か?「プロダクトアウト」か?

まず結論から言います。
医療機器の開発スタイルは「マーケットイン」であるべきと考えます。

このマーケットイン、プロダクトアウトの議論は、企業でマーケティングを担当している方や製品企画、製品開発の仕事に携わっている方なら、必ず聞いたことのある言葉かと思います。また、私のようにビジネススクールの出身者は必ずと言っていいほど、授業やケーススタディでこの議論を行ったはずです。一般論的に製品の開発スタイルは2種類あり、市場のニーズに基いて製品を開発していくスタイルを「マーケットイン」、企業が持ち合わせている技術やアイデアをベースに製品を開発していくスタイルを「プロダクトアウト」と呼んでいます。どちらが良いという訳ではなく、開発する製品群や企業により適切なスタイルはあるかと思います。当社のように金属加工技術がベースにあり事業を展開している企業ですと、製品開発はどちらかと言えば「プロダクトアウト」型になる傾向があります。既存の切削加工技術やワイヤー放電加工技術を使ってステンレス鋼を切り出し、
手術器具に仕上げていく…これは自然な製品開発の流れだと思います。

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こんな場面を想像してみてください。加工技術をベースにして、これはスゴイ医療機器ができたと言って医療現場にプレゼンに行ったとします。

「実はこの機器は寸法精度がコンマ○○mmでして、ここまで精密に加工できるのは、当社だけの技術なんですよ」

とドクターや医療機器メーカーの方に言ってみたりする。
結果は、

「……」

「で、なに?」

そこまでの精度なんて求めていないと言わんばかりの反応が返ってくることが予測されます。そんなのないよーと言われるかも知れませんが、実はこれ、良くある話なんです。実際の市場のニーズを把握せず、自分たちが思うスゴイことだけを全面に押し出した一人よがりの製品開発の絵面です。

「それって自分たちのことでは?」

と突っ込まれてしまいそうですが、当社も当初はプロダクトアウト型でした。正確に言うならば製品開発のスタイルがプロダクトアウト型ではなく、事業参入がプロダクトアウト型と言えば良いのでしょうか。既存の技術(金属加工技術)や経験(医療業界での製造管理・品質管理の経験)を活かして新規に医療機器業界に参入しましたので、プロダクトアウト型ではありました。ただし、製品開発においては、あくまでマーケットインのスタイルで行っております。

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また、最近では、プロダクトアウトも少し論じ方が変わってきております。世の中にはモノが溢れ、欲しいものの具体的なイメージができていないユーザーも多いそうです。そう言ったニーズが曖昧なユーザーの潜在的な部分に製品としての形を明確に示すことで「そうそう、こう言うのが欲しかったんだよ」と言わせる。これは、一般的な消費財に当てはまり、最近良く言う「提案型○○」というスタイルとして成立するとは思います。

が、これが果たして医療機器の分野でも当てはまるのでしょうか?ドクターに「そうそう、こういうものが欲しかったんだよ」と言わせるような機器をメーカー独自に考え出して開発することが可能なのでしょうか?それは絶対に無理とは言いませんが、極めてハードルが高いことだと思います。医療の世界には従事者しか分からない手技や使い勝手が存在しているかと思います。その分からないことを日々の会話の中で拾い上げていき、製品開発のベース情報にしていったほうが、確実な医療機器の開発が行えるのではと思っております。

つまり、医療機器の開発においてはマーケットインのスタイルが適していて、そのベースとなる情報はドクターが発信する日々の「小さなニーズ」の積み重ねであるというのが、今回のテーマの結論であります。

「でも、1人のドクターが言っているだけで、それは大きなニーズの中のホンの少しのことでは?」

「なんか御用聞きみたいで嫌だな」

このようなコメントも来そうです。極論を言えば、最低1人は買ってくれるドクターがいるとポジティブに考えた方が良いと思っております。

そこで、次回は、「御用聞きで何が悪い!医療現場の小さなニーズに対応することのメリット」と題して、少数派の意見に基いて実施する医療機器開発について、考えてみたいと思います。ぜひ、次回の記事もお楽しみにしてください。