LICトレーナーは非常に使いやすい設計がなされた呼吸理学療法機器です。ALS等の神経筋疾患患者様向け呼吸リハビリテーションとして、主に利用されています。ただし、医療機器という性格上、取り扱いには細心の注意が必要です。今回は、LICトレーナーを本格的に活用する前に、行っておくべきエクササイズついてご紹介します。

※LICトレーナーは医療機器ですので、主治医への事前相談が必要です。理学療法士など、専門家のアドバイスを受けながら適切な形で実行するようにしてください。

予備練習

LICトレーナーの練習でまず行うことは、機器による息吐きの実感を掴み取ること。その感覚が得られれば、練習での陽圧にもスムーズに慣れていきます。

マスクを密着させ、リリーフ弁を放した状態で、息を吐きます。マスクは口と鼻がきちんと被さり、密着しているかどうかを確認してください。なお、息を吐く際は、必ずこのリリーフ弁を開放した状態で行います。

息を吐く実感を得られたら、蘇生バッグを取付け、陽圧に慣れる練習を始めます。まずは蘇生バックをトレーナーに取り付けてください。

息を吸うときは、リリーフ弁をしっかり閉じます。補助者は、患者さんの様子を見ながらゆっくり蘇生バックから空気を送り込んでください。

患者さんが限界を感じたら、弁を開放し、息を吐き出します。陽圧で息を吸い、リリーフ弁の開放と同時に息を吐く。この繰り返しが練習の基本です。


あせらず、まずは陽圧と呼吸のリズムに慣れていくところから始めましょう。肺活量よりLICトレーナーの陽圧で得られる換気量が多くなれば、肺の力を機器によって上手く引き出しつつあることを意味します。その調子で練習を進めていくようにしてください。

耳が痛くなったときの注意点

加圧練習をしているとき、耳が“キーン”と痛む場合があります。それは、肺のほうへ空気が上手く入らず、口だけに空気が充満している状態です。口に空気がたまると耳に圧力がかかり、痛みを感じる原因となります。
その際は、喉の力を抜くよう患者さんにアドバイスを送り、蘇生バックの加圧を緩めながら、無理のない範囲で空気を送り込むよう上手に調節してください。

実践練習

LICトレーナーを使った実践練習は、大きく分けて2つあります。リリーフ弁を患者さん自らが押さえる方法と、患者さんにその力がなく、補助者が弁を調節しながら呼吸を促す方法です。LICトレーナーの練習は、この2つの場合に応じて適切に行うようにしてください。

リリーフ弁を自分で押さえる使用方法

まずはリリーフ弁を閉じて息を吸います。

加圧に限界が来たところで、弁を開放し、ゆっくり息を吐きます。

リリーフ弁を補助者が押さえる方法

リリーフ弁を押さえることができない患者さんの呼吸を介助するときは、リリーフ弁を外して行います。

補助者がリリーフ弁を直接押さえ、加圧します。マスクは空気が漏れないようしっかり密着させます。患者さんの様子を注意深く観察しながら、ゆとりをもって3回程度加圧しましょう。

なお、加圧時は、患者さんが「もう限界」というところでストップしなくてはなりません。そのタイミングは本人でないと分かりませんので、事前にストップするときの合図方法を確認したうえで始めるようにしてください。

患者さんが合図を送ったら、素早く弁を開放して息吐きを促してください。合図の送り方としては、目をパチパチさせるなど、簡単で分かりやすい方法がベストです。

マノメータで管理しながら使用する方法

最後に、マノメータで加圧管理しながら実施する方法をご紹介します。マノメータは、加圧の厳重管理に最適の圧力計です。たとえば、「この患者さんは30㎝までしか加圧できない」という場合、マノメータを30㎝に設定し、補助者はそれを見て切り替えのタイミングを計ります。

マノメータはLICトレーターの開口部、マスクとの間に取り付けます。

補助者は、マノメータの圧力数値を確認しながら加圧します。

設定の数値に届いたところで、加圧をやめ、息吐きを促します。どの加圧まで大丈夫かは、患者さんによって異なります。細かい設定に関しては、必ず主治医に相談して決めるようにしてください。

LICトレーナーの使用方法については、実演を交えた動画でも説明しています。練習効果を高めるためにも、記事と合わせこちらもぜひご覧になってください。